共感経験尺度(テスト)を大学院生、大学生、専門学校生あわせて310名に施行した。また、同時に孤独感尺度(LSO)、自意識尺度も施行した。今回の調査にあたっては、EESの妥当性を高めるべく、従来の調査項目を改良し、共有経験尺度と共有不全経験尺度という下位尺度を設定できるようにした。項目分析と因子分析を行い、また信頼性が確認され、共感経験尺度の改訂版をまず作成した。これにより、角田(1992)で問題点とされた「共感」と「同情」の識別が可能となった。 2つの下位尺度の得点分布から、共感性のタイプ分けを試み4タイプ(両向型、共有経験優位型、両貧型、共有不全経験優位型)を抽出した。両向型は、他者との感情の共有経験と他者の感情を共有できなかった不全経験のどちらも高く、共有経験優位型(共有型)は、他者の感情を共有した経験のみが高い。また、両貧型はどちらの経験にも開かれておらず、共有不全経験優位型(不全型)は他者の感情を共有できなかった経験が高いものである。各タイプと孤独感尺度ならびに自意識尺度との関連を検討した結果、両向型が自己と他者の個別性を認識し、もっとも共感性が高いと考えられた。共有型は「同情」タイプに相当し、両貧型はもっとも共感性が低く、不全型は他者との心的距離があり、親密さを求めながらも他者との関係がもちにくいものと考えられた。以上について、「教育心理学研究」にまとめ、投稿し採用された(第42巻、2号掲載予定)。 現在、各タイプから10名ずつの被験者を抽出し、ロールシャッハテストを施行している。12名については取り終え、反応の記号化を行った。次年度も引き続き、ロールシャッハテストを施行し、各タイプを深層心理学的観点から明確にする予定である。
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