日本、台湾、中国、韓国における産業構造、職業・人口移動からみた地域的自律性について、それが最も顕著に示されていたのは中国であった。つぎに日本と台湾が、それに続いていた。一方、こうした傾向が最も希薄であったのは韓国であった。 つぎに、地域リーダーの特質と集団構造、および国家との関係をまとめると以下の通りであった。まず、韓国では両班的かつ同族代表的な名望家が、中央の政治や財閥の経済活動と密接な関連をもちつつ、地域において指導的な位置を占めていた。一方、中国では地域的なカリスマが、台湾では実務家的な有力者が主要なものとなっていた。こうした中国と台湾については、中央の政治や経済との関係で一定程度の自主性と主体性を維持していた。この傾向は中国にとりわけ顕著であった。日本については、ムラの名望家的なリーダーが国家との関係を背景に、地域において重要な位置を占めていた。 地域の自律性との関連で、それを最も強く支えるものとなっていたのは、中国におけるカリスマ的地域指導者であった。これに続くものとして、台湾における実務家的な有力者と日本における名望家があった。また、これら地域指導者の特質については、変動の内発性と親和的な関係がみられた。さらに、それについては、儒教倫理の各国・各地域における展開と変容が重要な意味をもっていた。 以上の内容から、産業構造、職業・人口移動からみた地域的自律性を支えていたのは、地域リーダーの特質であったといえる。その特質については、儒教倫理の各国・各地域での展開・変容にみられたように、地域の分化的・社会的背景が決定的な需要性をもっていた。さらに、それは変動の内発性と関連するものとなっていた。
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