この研究では外国人研修生、特にインドネシアからの研修生の日本社会への適応について取り組んだ。ここでは三重県のケースを取り上げて、この問題にアプローチした。入手可能な三重県の資料をもとに外国人研修生問題の全体像を明らかにしたうえで、インドネシアからの研修生の個別的問題を扱った。調査としては30名程度のインドネシアからの研修生に面接を試み、特に生活環境(日本語の習得状況、日本社会との接点、食生活、会社での人間関係など)を中心に調べた。研修生の多くは日本滞在予定期間が短いため、日本文化、日本語の修得にあまり熱心ではなく、また日本社会の閉鎖性もあいまって、日本人と外国人研修生との間に受動的隔離現象(passive segregation)ともいうべき状態が存在していることが明らかになった。しかし、すべての研修生が同じように日本社会から遠いわけではなく、キリスト教信者は、日曜日にはキリスト教会に礼拝にいき、そこで相当に日本人と接していた。同じインドネシアからの研修生でもイスラム教徒はかなり異なった状況におかれていた。食生活においても宗教的要素は相当に重要であることが明らかにされた。 この調査の結果を通して、外国人研修生の日本社会における受動的隔離現象を乗り越えて、より円滑な人間関係をもった多文化社会の建設に向けて、以下のことが重要と考えられた。1.日本語学習の場の創設、2.行政機関による民間団体の援助、3.行政の窓口への外国人相談員の創設である。キリスト教会がインドネシア研修生と日本人コミュニティを近づけたように、触媒的機能をもつ団体やシステムの創設、強化が重要であることがわかった。今後はさらにこの視点から研究を進めていきたい。
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