今年度は2つの研究を行った。 1つめとして、新聞の投書欄に寄せられた投書をもとに、現在人々がもつ家族イメージを分析した。すでに他の研究によって、家族とは人々がをれぞれもっている主観的な像であり、家族/非家族の区別は人々がそれぞれ主観的に行っているということが明らかにされている。それでは人々はどのような基準で家族/非家族の区別を行っているのであろうか。それを明らかにするためにまず、人々が家族に対してもつイメージを探った。それによると、家族内においては「無償性」「非業績主義」「比較不能性-交換不能性」という原理が貫通している(すべきである)と考えられていることがわかった。また、このような原理がはたらくゆえに、家族は「自己の存在の根拠」を無条件に与えてくれる場であり、「安らぎ」の場であると考えられていることもわかった。人々は、家族には上記のような特徴があり、非家族にはそのような特徴はないという、2分法的な単純化されて世界観を繰り返し述べている。そして人々は、上記のような原理を将来に向けて維持できるような人物を家族に区分し、維持できないような人物は「もう家族とは思わない」という形で非家族に区分する傾向があることがわかった。今後は、家族イメージの年齢差やジェンダー差、また時代差について調べていきたい。 2つめとして、筆者が既に収集していた数量データを分析して、中年期の女性のもつ家族イメージが、学歴、就労形態、家族形態などの基本属性によってどのように異なるかについて分析した。学歴が高いほうが、フルタイムの仕事をもっているほうが、子供や夫がいない人の方が、伝統的な家族意識から解放されている度合いが大きいことがわかった。ただし、家族イメージを構成する個々の項目によって、解放度には差がある。そこで今後はどの項目では差が大きく、どの項目では小さいのかなど、さらに詳細な分析を進めたい。
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