当初の具体的目的である天真白井流、天真一刀流の心身観を明らかにするための第一段階として、金沢市立図書館、富山県立図書館、高知県立図書館に史料調査に行き、下記のような天真白井流、及びそれに関連した流派の史料を写真撮影により収集した。 「天真傳一刀流兵法」「天真傳白井流兵法遣方」「天真白井流兵法譬咄留」「天真白井流兵法遣方併記録」「天真傳白井流兵法真剣遣方」「兵法至途宇乃千利全」「兵法未知志留辺拾遺」「無住心剣傳「無外真傳剣法」及び関連史料19点 次に、これらの史料の中から、特に天真白井流の心身観を描写した箇所を中心に解読し、分類整理し、内容の分析を試みた。 その主な内容は、次の通りである。 1.天真白井流では、中国思想における「天人合一」論に基づく心身観がみられ、そこには、それまでの剣術流派にはみられない道教思想、特にそのなかでも養生思想の影響が色濃くみられる。 2.この流派では、「気」を鍛練することを重視しており、それに関連した記述が随所にみられる。例えば、史料のなかで「真空」「赫機」と記されているものは、体内から発せられる「気」のありようを示したものであり、それを剣術の技術の中核として、捉えているところにこの流派の特異性がある。 3.この流派の「構え」も、他の剣術流派と比べて特徴的で、足幅が広く背をまるめた姿勢をとっており、その理由については不明である。 4.基本的な身体観は、気による天人合一気に基づいており、臍下丹田を中心とした身体像がみられるが、中国にみられるような「経絡」を伴うような詳細な身体構造論は展開されてはいない。
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