(1)史料の収集 当初の予定では石見国幕領を中心に、「御用」請負人の側に残された史料から、その経営分析を行なう予定であったが、散逸された史料が多く、経営実態に迫ることができる史料は少なかった。しかし在地史料からは「御用」請負人に関わる史料を多く・丹後・畿内の幕領史料調査によって、全国的規模での請負人の存在が明らかとなり、その活動実態を知ることができた。 (2)分析 今回の史料収集によって、幕領については全国的規模で請負人が存在していたことが明らかになり、多くの共通性を知ることができた。また近世封建制と官僚制の国有の性格について、理論構築するための足掛かりを得ることもできたが、当面着手しているのは次の点である。 ひとつは内済における請負人の役割分析である。主に収集したのは内済の入用関係史料と扱い人の行動日記であり、武士・請負人・村役人が内済を通じてどういう能力を蓄積していったのかを明らかにした。いまひとつは代官・地役人の役務日記の分析から、幕領支配における代官・下級役人・請負人・村役人の役割分担の実態を明らかにすることを目指している。 今回の成果とこれまで行なってきた大坂町奉行「支配国」での請負人に関する研究成果をあわせることによって、新しい近世封建制像の構築を目指したい。
|