研究概要 |
平成4年度は、人間の知覚、思考という観点を中心に据える立場をとるモデルである仮想心性を想定し、これを分析の枠組みとして、会話の含意等間接的な伝達、および不透明な指示表現、その他を分析、考察した。 平成5年度は、同じモデルの適用を、照応、指示、省略に拡げ、多くの事象を統一的に取り扱うことを試みた。まず、束縛理論を意味的な概念を用いて修正しようというJackendoff(1992)を批判し、その問題点を指摘した。次に、束縛理論一般において問題となる現象を、作成したデータベース等から具体例をあげて論じた。例えば、Chomsky(1981)では理論的に可能であるとされている When he came in,John looked up.のようなタイプは、実際のデータには全くと言っていいほど見られない、という点である。この主張が正しいとすれば、問題のタイプは束縛理論の形成において決定的な例であるため、理論の根本的な見直しが必要となる。さらに、問題の解決に必要なのは、概念的な要因である概念/意味構造ではなく、認知的な知覚の関与者であると主張し、仮想心性を用いて、実際の英語の照応、指示、省略の例を分析した。 イメージスキャナーとOCRソフトを購入し、独自に資料を編纂した。大量のデータを包括的に収集することができた。また、fip等で他の研究機関で編纂されたデータをコンピュータネットワークを介して入手することもできた。 平成6年度は、時制、特遇表現(日本語の敬語など)を同じ枠組で研究し、理論の拡張を図りたい。
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