本研究においては、廃棄物処理の最適化を導くための処理事業のモデル化を最終的な目的とするが、今年度の計画ではその基礎的研究として廃棄物関連統計の検討を直接の課題とした。産業廃棄物については、「全国産業廃棄物排出精密原単位等調査」によって排出・処理量の推計値が得られるが、本統計の実査者や被調査者である省庁、都道府県等の関係者へインタビューを行い、その結果次のことを得た。 1.廃棄物の定義が非有価物という点にあるため発生量と排出量との区分ができない(両者の差がリサイクリングされた量に相当する)。2.本調査は厚生省によって都道府県にたいして行われるが、各都道府県の回答は都道府県独自の業務から得られる情報による。国の表式統計と都道府県の業務統計とは調査の目的、形式、調査周期も相違するため適切な回答がなされない場合がある。3.現行の方式は「原単位法」と称する代理変数を用いる推計方法を採用している。つまり、小数の実査の行われた都道府県の排出量に過去の趨勢を加味したものを活動指標(カバー率)で除して原単位を求め、この値に再び活動指標の指数を乗じて総量を算出する。ところが、活動指標に、たとえば製造業では排出を直接反映しない従業員数等のみが選定され、また本社事業所も産業格付け上当核産業活動を行っているとみなされるため排出量が過大な推計となる。その結果、都道府県が推定・公表した値と乖離を生じ統計の信頼性を損ねている。4.個別の産廃種類についても、とくに産廃の40%を占める汚泥において含水率が指定されていないため指定値は含水率に非常に敏感になる。 以上の知見から現行産廃統計をそのままデータとして用いることには慎重にならざるを得ず、今後はできるだけ組替えや補正を行いながら生産側の統計と併せて利用する必要があるとの結論を得た。
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