昨年度までに1985年について「環境分析用産業連関表」の第1次推計を行い、さらにそれを用いていくつかの分析結果をまとめてきた。今年度は分析の過程で気付いた点について第1次推計結果をさらに精緻化するとともに、その結果を用いて省エネ技術の効果に関するシミュレーション分析をさらに進めた。また環境問題の国際比較分析の手始めとして中国四川省成都市に関する研究に、また時系列分析への拡張をめざして1980年の環境分析用産業連関表の作成にとりかかった。省エネ技術の効果の分析として取り上げたのは、住宅の断熱化、気密化の問題と高炉スラグをセメントとして利用する問題についてである。これらの分析からわかったことは、まず断熱住宅が普及した場合、断熱材を従来より多く使うことによるCO_2排出の1年あたり増加量(住宅建設時に断熱材を余分につくることによって発生するCO_2を住宅の耐用年数で割り引いた大きさ)よりも、1年間の家庭のエネルギー消費節約による排出減少量の方が7倍以上大きいことがわかった。またセメント材料として高炉スラグを有効利用すると、CO_2の排出が現状に対して日本全体で1%程度改善されることがわかった。これは高炉スラグを利用する場合には、セメント製造における焼成工程が省略されるためセメント製造に必要なエネルギーを約87%節約できることなどによる。 中国成都市に関する研究及び1980年表の作成については、現在なお作業が続行中である。このうち、成都市に関する第1的なファクト・ファインディングとして言えることは、成都市の環境状況は中国の他都市と比較すれば良いほうであるが、成都市の工場からでるSO_2や粉塵の生産物(物量)単位あたり排出係数は、日本の20倍以上の大きさを示すケースがある。また成都市内部でも排出係数の高い工場と低い工場の格差が大きく、公害防除の努力がまだ十分浸透していない現状を示している。また1980年表の推計については1985年表の推計手法にほぼ乗っ取って行っているが、1部の統計調査が1980年時点については行われていないため若干の工夫が必要であった。
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