本年度は、住宅に関する各種統計資料を収集し、統計資料のそれぞれの性格および統計相互の関連を明らかにし、体系づけの課題を整理した。その要点は以下の通り。 まず、住宅統計はその製作目的により(1)住宅経済の規模をとらえる統計と(2)国民の居住生活をとらえる統計の2つに大別できる。(1)には、「住宅着工統計」「住宅用地完成面積調査」「不動産業総合調査」「建設投資推計」があり産業としての住宅経済の規模を国民経済計算の中で位置づける基礎資料を提供している。(2)には「国勢調査」「住宅統計調査」「国民生活基礎調査」など住宅と世帯との関連をみるもの、「家計調査」「貯蓄動向調査」「全国消費実態調査」など家計費に占める住居費をとらえるものがある。他に住宅意識については「住宅需要実態調査」がある。 以上の領域についての統計資料は比較的充実しているが、住宅価格、家賃・地代に関する統計、とりわけ世帯の住宅取得能力ないし家賃支払能力を計算するための基礎的な統計データが欠落している。通例、価格データとしては不動産経済研究所などの民間調査機関が関連業界を通じて収集したものを、支払能力としては「家計調査」を利用しているが、前者は特定業者による偏りをもつ。近年、政府統計でも「指定流通機構」による業務資料が把握されているが住宅市場全域を補足していない。したがって、「家計調査」や「住宅統計調査」との比較が可能な価格データの充実が望まれる。この点どのような形態で調査すべきか、流通業者を対象として市場サイドからとらえる方法と「家計調査」や「住宅統計調査」の価格項目を調査の負担が増さない範囲で充実し世帯の側からとらえる方法の両面から接近する以外にはない。
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