会計と組織と社会の関係を、学際的視点から統合的に研究するために、まず、社会学の視点から理論研究を行った。特に、ポスト機能主義の系譜に属する研究を取り上げ、「解釈的社会学」および「構造主義」のフレームワークに依拠した会計研究の理論的特徴を考察した。さらに、両者の視点を統合したギデンズの構造化理論にもとづく会計研究の可能性を検討し、これら3つのアプローチが統合的に理解できることを示した。 次に、市場と組織の関係から、会計学と経済学・言語学との統合についても考察した。そこでは、会計の機能を、言語学によって説明できる側面と経済学によって説明できる側面に分離し、その視点から、会計の歴史的発展動向を展望し、会計の本質機能の相対化の側面を明らかにした。 最後に、以上の理論的検討をふまえた上で、特定の会計実践について、具体的に検討した。特定の会計実践としては、1980年代の日本の投資尺度が取り上げられ、PER、qレシオの社会・経済的意義を、上記の学際的フレームワークのもとで検討した。その結果、1980年代の投資尺度をめぐる変化は、理論的に導出されたものではなく、特定の社会・経済的コンラクストに規定されたものであることが明らかにされた。また、投資尺度としての会計情報の有効性も相対化されていると考えられる。 以上の研究の成果の理論的側面については、これから論文化して公表する予定であるが、日本の投資尺度に関する研究は、すでに論文として公表し、さらに英文ペ-パートとして、ヨーロッパ会計学会(1994年4月イタリアで開催)で報告する予定である。
|