当研究課題は、正値調和関数の境界付近での増大度が、境界からの距離のべき乗で上下から抑えられるような領域の幾何学的な性質を明らかにすることを最終目標にしている。当該年度は原点を含む一般な領域について、原点からの擬双曲距離と境界からの距離との関係を本質的には変えないような、領域の変形(特に穴開け)を求め、変形した領域上の各種ポテンシャルの考察等、ポテンシャル論的な方法を用いて、変形による正値調和函数の空間の変化を見た。同時に逆方向からのアプローチとして研究代表者が以前に擬双曲距離を用いて特徴付けを与えた内部NTA領域を調べることからも出発した。この内部NTA領域は、調和関数や擬等角写像などの研究を通じて以前から導入され調べられて来たと同じものである。さらのこの擬双曲境界条件を満たす領域は擬双曲距離の指数関数が可積分になるための必要十分条件であることからも、近年注目されている。その結果から正値調和関数のべき乗が可積分になることが導かれ、それと擬双曲境界条件とは同値ではないかと考えられている。ところで正値調和関数については、べき乗が可積分であることと、境界付近での増大度が境界からの距離のべき乗で上下から抑えられることとは非常に近いので、べき乗可積分性との関連からも進めた。また、原点からの擬双曲距離を重み関数と見る観点から重み付きのソボレフ型不等式(特に退化する楕円型偏微分作用素に対するもの)が成り立つ領域との関連も調べた。
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