本研究では非一様磁場中での電子の輸送現象を解析した。乱れたスカラーポテンシャルが存在する系ではコンダクタンスが普遍的な揺らぎを示し、不規則性が大きくなると電気伝導度の消失(アンダーソン転移)がみられる。一方、スカラーポテンシャルが一様でもベクトルポテンシャルが乱れているため、系の並進対称性が乱れ、上述の効果が現れる可能性がある。本研究ではこの二つのことを数値計算により調べた。 まず系に一様な磁場と不規則磁場を同時にかけて、不規則磁場が大きくなるにつれてコンダクタンスの振る舞いがどのように変化するかをLandauer公式により解析した。その結果、不規則磁場があまり強くない状況では一様磁場によりつくられたエッジ状態が不規則磁場によってほとんど散乱されないという結果を得た。また、不規則磁場が強い極限では伝導は拡散的になり普遍的なコンダクタンスの揺らぎが存在することを示した。この値は従来から知られているスカラーポテンシャルが乱れている場合とほぼ一致していた。 また、3次元の強束縛模型のホッピングの項の位相をランダムにした模型における局在長の有限サイズスケーリング法による解析を行った。これよりこの系ではアンダーソン転移が、ベクトルポテンシャルの乱れのみで起こることを示した。このとき、転移点における局在長の発散の臨界指数は1.1程度であると評価した。この値は従来のスカラーポテンシャルが乱れている場合の1.4よりも小さく、この系が新しいユニヴァーサリティクラスに属している可能性を指摘した。
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