研究概要 |
本研究は、レーザー・マイクロ波二重共鳴イオン化分光法を用いて、今まで測られていない高励起リュードベリ状態の超微細構造を系統的に測定し、その分裂間隔の主量指数nに対する依存性及び外部摂動から受ける影響を明らかにするものです。 今年度はまず、測定対象のインジウム原子の高励起された高い角運動量をもつリュードベリ準位間のマイクロ波遷移の測定を行った。二台の色素レーザーによってnf^2F_<5/2>及びnf^2F_<7/2>リュードベリ状態に励起された原子にマイクロ波を、照射し、(n+1)f^2F_<5/2>←←nf^2F_<5/2>及び(n+1)f^2F_<7/2>←←nf^2F_<7/2>(n=35,36,39-41)のマイクロ波二光子遷移を観測した。その結果、F系列のリュードベリ状態の微細構造が反転していることが初めて明らかになった。 また超微細構造を測定するために、ns^2S_<1/2>及びnp^2P_<3/2>リュードベリ系列準位間のマイクロ波遷移の観測を試みた。その結果、(n+1)s^2S_<1/2>←←np^2P_<3/2>状態間の一光子遷移及び(n+1)p^2P_<3/2>←←np^2P_<3/2>状態間の二光子遷移が観測され、高励起状態の超微細構造として初めて39s^2S_<1/2>の分裂間隔が11.4(10)MHzになることが測定できた。 更に、位相ロックされたガンダイオードを取り込んだ自作のマイクロ波周波数安定化装置も完成された。これにより、クライストロンをマイクロ波ソースとした時に生じたMHz程度の周波数不安定性が十KHz程度までに抑えることができた。現在この新しマイクロ波装置を用いて、高励起状態の超微細構造の測定を続けていると同時に、平成6年度の科研費奨励研究(A)の研究計画で示した「微細構造相互作用がリュードベリ原子のカオス状態にあたえる影響」という新しいテーマの研究にも取り込んでいる。
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