研究概要 |
この研究の目的は、1.琉球列島および小笠原諸島から得られた浅海性介形群集を記載し、2.Loxoconcha属に注目してその地理的変異をあきらかにし、3.そのパターンの起源をコンピュータシミュレーションによって解析することである。それにより熱帯島嶼地域の浅海性生物の生物地理パターンの起源を明らかにした。 小笠原諸島の父島・母島、琉球諸島の奄美大島・沖縄・石西礁からの現生試料について、生物群集の解析・介形虫種の群集解析・Loxoconcha属の解剖学的研究・堆積物解析を行った。 本地域の介形虫フォーナが、地理的に近接する西南日本のフォーナ(たとえばIshizaki.1968)と、あるいはまた地理的には遠いが生態学的にはきわめて近いマリアナ諸島のフォーナ(たとえばCronin印刷中、Ross1990MS)と、どの程度の類似性をもっているかを調査した。その結果、ミクロネシアと日本本土の群集には共通種がほとんどない(Hanai et al,1980、Weissleader et al,1989参照)のに対し、琉球諸島と小笠原諸島の群集はミクロネシアと日本の群集が混合したもので、いくぶん熱帯性の強い種を伴っていることが分かった。L.marinoi,L.azari,L.turneraeおよびL.heronislandensisなどの熱帯種(はじめの2種は未公表種、Ross,1990MS)は、その分布の北限をこれらの島々(琉球諸島,小笠原諸島)まで伸ばしているように思われる。Loxoconcha科の種に関しては、種数の豊富な西南日本よりも、マリアナ諸島の方が多様性が高い。 これらの結果から、モデルに用いられるパラメータを決めた。このモデルでは集団の移住と生き残りの確率を考慮した。またこの計画を介形虫と他の生物群集の、生息場所の微地形、エネルギーレベルの違い、底質の違い、organic carbonの分布、および堆積物と生物の関係の違いによる分布の研究に拡張した。現在、これらの要因の値を求めるため、実験およびフィールド調査を行っている。
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