シラシクロペンタジエン(シロール)は環内にケイ素原子を含む最も基本的な共役環状化合物の一つであるが環内炭素上に置換基を持たないシラシクロペンタジエンはこれまで安定な単量体としては単離されていない。本研究では最初の安定な環内炭素無置換シラシクロペンタジエンとして1、1-ジメシチル-1-シラシクロペンタジエンを合成した。この化合物は熱的に安定であるがジエノフィルや遷移金属錯体と容易に反応することがわかった。 シクロペンタジエニリデンのケイ素類似体であるシラシクロペンタジエニリデンは環内二重結合とシリレン部位との相互作用に興味のもたれる化学種であるがこれまで報告例がない。シラシクロペンタジエニリデンの前駆体となりうる1、1-ビス(トリメチルシリル)-1-シラシクロペンタジエンを同様の方法論によって合成した。この化合物を光分解したところシラシクロペンタジエニリデンの発生を示唆するヘキサメチルジシランの生成が確認された。シリレンの良好な捕捉剤であるアルコール類、ジエン類、ヒドロシラン類の存在下における光分解反応ではシラシクロペンタジエニリデン由来の生成物は得られなかった。シラシクロペンタジエニリデンの発生を確認するための反応条件及び前駆体の改良を検討する予定である。 シラシクロペンタジエンのラジカルイオン種の発生を目的としてその電子移動反応を検討した。1、1-ジメシチル-1-シラシクロペンタジエンは電子受容体であるテトラシアノエチレンとの間で電荷移動錯体を形成した。その電荷移動吸収帯に光照射するとケイ素-炭素結合の開裂が起こった。四塩化炭素共存下では塩素引き抜きがみられたことから電子移動によりシラシクロペンタジエンラジカルカチオンが生成しているものと考えられる。
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