研究概要 |
ボーダーラインのベンジルトシラートのソルボリシスにおける生成物形成速度(K_t)に基づく置換基効果、溶媒効果の解析結果は、協奏的単純置換機構を支持する。しかし、無置換体、酢酸中で、生成物形成に匹敵する原系復帰を検出し、ボ-ダライン機構の複雑さ、及びK_tによる解析結果に対する修正の必要性を指摘した。本研究ではベンジルトシラートのソルボリシス詳細機構を明らかにするためp-MeS-m-C1,p-Me,H,p-C1,m-C1置換ベンジルトシラートのソルボリシスに^<13>C-NMRを用いた^<18>O-^<13>C二重トレーサー法を適用し、イオン種中間体からの原系復帰過程の置換基変動、溶媒変動を検討した。p-Me体、酢酸中において、原系復帰は生成物形成の二倍程度まで増加した。この原系復帰立はより活性なp-MeS-m-C1体でも変化は無く一定値に届いたと考えてよい。逆に無置換体より不活性名領域では、置換基の電子吸引西濃力に比例し減少した。各置換基とも原系復帰は低求核性、高イオン化能の水性TFE中では酢酸中と同一であったが、高求核性の80%水性アセトン中では不活性化に伴い減少が観測され、原系復帰の求核力依存性及び基質依存性が示された。p-MeS-m-C1体の原系復帰率は各溶媒中で<S1>^^^Nソルボリシスの基準であるalpha-t-Butylbenzyl系と同一であり、この置換基質は<S1>^^^Nと見做してよい事が分かった。エタノール中では無置換体まで原系復帰はかんそくされず、<S2>^^^N領域に於ける協奏的置換機構を支持する。また、強い求核資剤の添加は原系復帰に影響せず、イオン対に対する攻撃は否定される。ボーダーライン領域では<S1>^^^Nと<S2>^^^Nが競争し、その比率が置換基、溶媒の求核力に依存し変化すると結論される。今回の結果は<S2>^^^Nで原系復帰が増加すると説明したSneen説を完全に否定する事が分かった。
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