ヨウ化銀やヨウ化リチウムなどの固体電解質に絶縁体微粒子を分散させた混合物試料で、イオン伝導度がむしろ増加することが知られている。これは界面伝導の寄与、または室温での準安定相(超イオン伝導相)の寄与によるものとして理解される。本研究は固体電解質自体を超微粒子化し、その電気的性質と粒子のサイズとの関係を調べることを目的とした。 本年度において、ヨウ化銅(I)と臭化銅(I)の微粒子を1Torr程度のヘリウムガス中蒸発法により作成し、電子顕微鏡により観察した結果、典型的な粒子の大きさが100nm程度となることがわかった。またとくに臭化銅(I)の微粒子を500気圧程度で圧結した多結晶体について室温でのイオン伝導性の評価を試みた。室温付近での抵抗率は数百OMEGAcm以下であり、純粋な臭化銅(I)結晶(約10^<8A>OMEGAcm)に比べて高い伝導性を示した。しかし、市販の臭化銅(I)粉末を圧結した多結晶体も保存状態によっては同程度の伝導性を示すことから、微粒子化したことの効果は明らかではない。多結晶体での伝導度の増加は不純物や化学量論比からのずれに支配されている可能性がある。微粒子多結晶体試料について銅電極を用いて電解を行うと試料の負極側界面に銅の析出が認められ、また電解を通じて試料の色が顕著に変化したことから、室温においても物質移動が起こることがわかった。ただし現時点では電極の有意な重量変化を示すデータは得られておらず、電子伝導が支配的な混合伝導であるように思われる。今後、伝導度の温度変化や周波数特性の測定などにより、さらに詳しく調べる必要がある。
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