原生生物のクラミドモナスの光受容機構については、ロドプシンが関与していること、眼点で内向き電流が流れることが知られている。光受容分子の光の吸収の方向性を調べるために、偏光による刺激を行った。細胞体を吸引電極で吸い付け、光受容電流を測定したところ、5msの光刺激に対して、ピークが1-6pAの電流が10-15ms流れた。眼点の上の細胞膜に対して平行な方向より偏光で刺激したところ、偏光の電界ベクトルの方向によって光受容電流の大きさが変わった。偏光の電界ベクトルが眼点の膜に対して平行な時に電流のピークが大きく、垂直な時に小さいことがわかった。光受容電流に続いて流れる鞭毛電流は、全か無の法則に従い、光受容電流と鞭毛電流との間隔は光受容電流が大きいほど短かった。また、眼点の細胞膜の垂直方向より光刺激したときは、偏光の電界ベクトルによらず、光受容電流の大きさは一定であった。このことはクラミドモナスの光受容分子は、眼点の上の細胞膜で細胞膜と平行に配向していて、その平面内ではランダムな方向を向いていることを示している。この結果は今まで知られている無脊椎、脊椎動物におけるレチナ-ルの方向性と一致している。 クラミドモナスの眼点の複屈折性を調べるために偏光顕微鏡で眼点を観察したところ、眼点と平行、あるいは垂直方向に強い複屈折性を示すことが分かった。その観察において、特定の2方向に向いている細胞が多いことが分かった。このことは、クラミドモナスが偏光の方向を感じて方向転換している可能性を示している。
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