本研究ではまず、ハイドロキシアパタイト焼結体の作成を行った。H_3PO_4とCa(OH)_2を原料として、湿式法により合成し粒度均一化を行ったハイドロキシアパタイト粉末を圧粉末に成形した後、電気炉で1150℃で焼結した。細胞培養実験には、得られた焼結体をダイアモンドカッターで適当な大きさに切り出し、洗浄およびオートクレーブ滅菌した後に用いた。 マウス頭蓋冠由来の骨芽様細胞株MC3T3-E1細胞を用いて、ハイドロキシアパタイト焼結体と共に培養を行ったところ、ハイドロキシアパタイト焼結体の周囲に多くのMC3T3-E1細胞が積積するのが観察された。通常のalpha-MEM培地(10% FBS血清含有)を用いて2カ月間培養した後、この積層したMC3T3-E1細胞を剥離し、乾燥後、X線粉末回折法により測定したが、骨アパタイト結晶とみられる回折ピークは観察されなかった。一方、細胞とハイドロキシアパタイトの接触と反応性を良くするため、ハイドロキシアパタイト粉末をTi板にコーティングし、表面積を大きくした材料でMC3T3-E1細胞培養を試みた。その結果、多くの細胞の積層が認められたが、焼結体の場合と同様に結晶性の骨形成は認められなかった。しかし、SEM観察の結果、アパタイト上でも骨細胞が活発に増殖していることが認められ、培地に骨形成を高める物質を添加するか、あるいは長期的かつハイドロキシアパタイトとの反応性を高くすることによって、新生骨の結晶が生成する可能性が見いだされた。
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