試作した真空チャンバ中において、窒素雰囲気中、真空中、大気中の各条件の下でポーラスシリコンをターゲットとし、レンズにより集光したN_2レーザパルス照射によりアブレーションさせ、その発光特性を比較検討した。その結果、アブレーション時にターゲットとして用いたポーラスシリコンから発光物質が飛び出し、その発光スペクトルが粒径約20〜30オングストロームのシリコン微粒子からの発光に相当することが明らかになるとともに、アブレーションにより対向基板上に発光薄膜を堆積でき、その薄膜の光学特性がターゲットとして用いたポーラスシリコンの表面処理に大きく依存することを見いだした。即ち、陽極化成直後のポーラスシリコンをターゲットとした場合には、堆積した薄膜の発光効率の時間変化がほぼ一定となり、ターゲットとして用いたポーラスシリコンの発光効率の時間変化と大きく異なること、またそのとき、低密度励起時における輝度劣化現象に伴うレッドシフトと同程度のピークシフトを発光スペクトルが示すことが明らかとなった。さらに、光照射純水放置処理によりポーラスシリコン表面を酸化させたサンプルをターゲットトシテ用いた場合にも発光効率の時間的変化がほぼ一定となるが、発光スペクトルのピークはブルーシフトすることが明らかになった。さらに、窒素雰囲気中、あるいは、真空中において輝度劣化割合が大きく減少することを見いだした。これらの結果よりアブレーション時においては励起光密度が比較的低いため、通常のレーザアブレーション現象のように表面融解などは起こっていないが、大気中におけるアブレーション時にはスペクトルのレッドシフトと輝度の安定化をもたらす何らかの酸化反応が誘起されているものと考えられる。さらに、その酸化反応は、通常、ピーク波長のブルーシフトをもたらす自然酸化膜などの形成過程とは異なるものであることが分かった。
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