摩擦面間に直流電圧を印加することでなじみが改善され、低摩擦特性が得られる。しかし同一粘度の潤滑油を用いた場合でもその特性が得られる場合と得られない場合があり、それは電気導電度に対応していた。また潤滑油を構成する成分が多少異なるためにその影響も否定できない。そこで今年度は耐焼き付き性が向上するといわれる硫黄分、及び電気通電特性に関係すると思われるアロマ分がどのようになじみに影響するかを重点的に調べた。以下にその報告をする。 1.まず良好ななじみが行われている場合といない場合において通電過程の違いを確認するため20MHzのサンプリング速度で電圧変動を測定したが特に違いは見られなかった。これはまだ極小的な速度で電流が流れていることが考えられるが、ストレイジスコープタイプの測定法では限界があることがわかった。 2.低摩擦特性が得られた潤滑油(P150)が含有している硫黄分と同量の100ppmを無極性鉱油(H150)に添加し、摩擦試験を行なった。硫黄分は硫黄単体ではなく潤滑油中で存在すると考えられるDBT(ジベンチルチオヘン)を用いた。電圧及びショート電流を変化させたが再現性のある低摩擦特性は得られず、摩擦痕の様子もP150の場合と異なっていた。したがって微量の硫黄が関与したとは考えにくい。 3.通常潤滑油中にアロマ成分があると電気導電度は向上すると言われている。そこで硫黄分のときと同様にP150に含まれるアロマ分と同量のalphaメチルナフタレンをH150に添加した。結果は再現性もあり非常によい低摩擦特性が得られた。それはalphaメチルナフタレンを添加したことにより電気導電度が向上したためか、あるいはalphaメチルナフタレン添加による摩擦機構そのものが変わったかは区別ができない。ただしalphaメチルナフタレン添加だけでは境界潤滑特性を向上させない。したがって今後電気導電度の測定法の確立と他のアロマ化合物の添加の影響を調べる必要がある。尚、どちらにしてもalphaメチルナフタレンは有効になじみを行なうための添加剤になることは明かである。
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