本年度は2つの対偶実験によって摩擦力と振動の関係を明らかにした。 1。一般に使用される摩擦試験機を使って、摩擦部に振動を加える実験を行って、摩擦力、摩耗量の測定値と理論値を比較検討し、これらが制御可能であることを明らかにする。 我々の従来の研究で、摩擦系の垂直方向の振動特性(弾性変形)を考慮して摩擦力を定量的に求めてきた。この方法では、接触面の塑性変形を無視しているので、接触部の摩耗量が多いと接触界面が大きく塑性変形するので、測定値は理論値に比べて大きめに計算されていた。今回は接触部の変形の計上と塑性変形量を考慮にいれ、塑性変形後、非線形な形状変化する物体の弾性変形をミンドリン理論を用いて計算し、摩擦力を定量的に求めた。この結果は、11月に名古屋で行われた日本トライボロジー学会で発表した。 2。振動状態を精密に測定するために製作した摩擦試験機を使用し、すべり摩擦に起因して発生する摩擦振動現象を調べ、摩擦力、摩耗量の大きさあるいは変化の様子から摩擦振動の発生メカニズムを明らかにする。 今回はじめて行う実験であるが、摩擦試料として高温特性、耐摩耗性に優れている窒化けい素セラミックを使って、摩擦振動の発生しやすい高速摺動試験を行った。この結果、ある速度において摩擦振動が生じ、摩耗量が飛躍的に大きくなることがわかった。この速度の摩擦波形を周波数解析した結果、摩擦系が共振していること、摩耗過程は回転速度よりゆっくり進行することがわかった。この結果は、3月に東京で行われる精密工学会で発表する予定である。
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