研究概要 |
雷害防止や雷現象解明の観点から,誘雷は魅力ある技術である。これまでロケットを用いた誘雷技術の研究が世界的に行われ,雷を制御することに成功し,数多くの研究成果が報告されている。しかし,火薬を用いる危険性から,人里離れたところで実験が行われてきた。本研究の目的は,火薬を用いず,安価で取り扱いが簡単な水誘雷技術の確立である。前年度までに,電極間に噴水を上げることでフラッシオーバ電圧が減少することや,長ギャップ放電が誘導されることを明らかにした。本年度の研究では,風の影響を中心に水誘雷の実現について検討した。風が噴水形状に及ぼす影響として,水の粒化を促進することがあげられる。このため,強風中の噴水は水柱状とはならず,水滴状や霧状となった。また,風の影響を受け水滴状や霧状になった噴水の高度は,粒化が少ない噴水に比べ減少することが明らかになった。これは,空気中を上がる水が受ける空気抗力の影響は噴水の径に逆比例するためと考えられる。北陸で冬季雷を対象にフィールド実験を行った結果,雷雲が飛来する際は数十m/secの強風を伴うことが多く,この強風により噴水の高さは無風時の約1/4程度に押さえられる。このほか,フィールド実験では,雷雲飛来時に打ち上げた噴水から,コロナ放電のものと思われる数十mAの電流信号が確認された。
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