ウェーブレット関数系を固有関数系としてもつ作用素(申請時に説明済み)とその随伴作用素について、今回新たに、量子光学で用いられるボゾン生成消滅作用素の場合と類似の「作用素の ordering 問題」が定式化できることを示し、さらに、それを用いて、任意に与えられた確率過程の自己相関関係を非直交ウェーブレット擬似基底によって擬似対角化するシステマティックな計算法を提案した。これは、ボゾン演算子を用いた作用素の展開における2種類の「対角形式表現」である。(Glauber の)Q-表現とP-表現の相互変換の問題と数学的にアナロジーがあるものであるが、ボゾン演算子の場合とは交換関係が異なりより複雑であるため、若干の工夫を必要とする。今回提案した方法は、問題の作用素とその随伴作用素との間の交換子積が、「正規順序」で書いても「反正規順序」で書いても、それらの作用素の2次の項のみで展開できるという点に着目し、関係が同じ次数で閉じていることと関係の対称性を利用したものである。これにより、まず、パワ・スペクトルが周波数の逆数のべきで展開できるタイプの確率過程のついて相関の擬似対角化の計算法の具体的な表式を導出し、次にパワ・スペクトルが周波数の逆数と時刻の両方の関数になっている一般の場合について表式を導出した。後者の場合には作用素版のシャリエ多項式に関連が深いことがわかった。さらに、今回のアプローチは、これまで関係がつけにくいといわれてきたウェーブレットと微分積分演算との間に、数学的に根拠のある一つの関係が存在することを明らかにした。
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