本研究は、素子や配線を図形そのものとしてとらえることによってLSIのレイアウト設計を行う、複雑な設計規則に柔軟に対応する新設計方式を確立することを目的として行われた。本研究の成果を以下にまとめる。 1.スケッチ表現に基づく多層レイアウトシステムの開発:配線情報のラフスケッチを計算機上で表現する方式として「スケッチ表現」を提案し、計算機上に実装した。これは、三角形分割を基本としたデータ構造に基づいており、概略配線、配置および概略配線の微調整、コンパクション、最終配線形状への変換といった基本ソフトウェアからなっている。これにより、柔軟性の格段に高いレイアウト設計が可能となった。また、提案手法がLSIの信号線の設計のみならず、電源・グランド配線やパッケージの設計にも適用可能であることを示した。 2.BDDによる配線情報管理手法の構築:二分決定グラフ(BDD:Binary Dicesion Diagram)をマンハッタン配線問題に適用することにより、従来では実用的な時間内に解くことができなかった規模の問題が解けることを示した。これは単に問題を解いたというだけではなく、実現可能解のすべてを陰に列挙可能としているところに価値がある。 3.配置と概略配線の同時処理手法の構築:従来、配置と配線は独立して行われていたが、これを同時に処理する手法を構築した。これは、処理時間が短いだけではなく、結果として得られるレイアウトが非常に良質のものであったので、国際会議でも報告した。
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