本研究は実構造物の部材をモデル化した大型の供試体表面の一部を気密処理し、加圧された空気のコンクリート内部の流れを把握し、従来の小型供試体を用いて得られた透気係数と比較検討し、実構造物において透気係数が得られる計測方法を検討しようとするものである。実験はコンクリートに穴を設けてその部分を加圧あるいは減圧することによりコンクリート内部に空気の流れを生じさせることを予定していたが、加圧容器をコンクリート表面に取り付ける方法を用いた。これはコンクリートを傷つけないほうが実構造物に適用しやすいことおよび面で加圧することに比較的低い圧力でも流量が多くなり測定精度が良くなることなどの理由による。 本研究で得られた結果をまとめると以下のとおりである。 1)大型供試体において加圧面の相対する面からの透気量は小型供試体の透気量より大きくなる。これは小型供試体においては空気の流れが一次元流れであるに対して大型供試体では二次元流れとなっているためである。 2)差分法に基づいた解析結果から、大型供試体では二次元流れとなることが示され、計算された圧力分布は実測された圧力分布とほぼ一致した。また、加圧面の中央部では一次元流れとみなせる領域があり、この部分の流量を用いれば小型供試体と同じ透気係数となることがわかった。 3)補修された場合などのように、新旧コンクリートの打継面を有する場合の透気量は新および旧コンクリートそれぞれの透気量に加えて打継面から透気量の和となることが解析により明らかとなった。 本実験の範囲では、部材厚とコンクリートの水分分布が一様であることなど制限があり、今後この点について検討する必要がある。
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