低温水と接する加温担体表面近傍の温度分布を求めるために、円管内層流熱伝達理論を用いた。円管内層流熱伝達については、形式的には非定常1次元熱伝導問題と類似した方法で解くことができることになっており、クランク-ニコルソンによる差分法を用いて計算を行った。その結果、担体表面から100mum離れたところでは、表面温度からの温度低下がごくわずかであることがわかった。一般に、バクテリアの大きさが数mumであり、これらが集積したとしても、低濃度系における生物膜の厚さが数10mum程度であることを考慮すれば、生物膜が存在する部分の温度は担体表面と殆ど温度が変わらないと考えて良く、担体表面近傍には微視的な保温領域が存在ることが示された。 この微視的保温領域における微生物の付着増殖について実験を行った。実験では、加温した内径6mmの円管内を3℃の低温基質を通過させることによって、壁面への微生物の付着を試み、その後円管の断面を走査型電子顕微鏡で観察をした。その結果、円管内壁面から数10mum程度のところまで、バクテリアが密集している状態での付着していることが観察され、低温水と接する微視的保温領域でバクテリアの付着増殖が起こることが確認された。 これらのことから、低温水と接する加温担体表面には、微視的保温領域が存在し、ここにおいては微生物の付着増殖が可能であることが示された。以上の結果は、低温汚濁水の処理の可能性を示唆するものである。
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