研究概要 |
(1)札幌市内および近郊の性格が異なる20地域における計400件程度の住宅のエネルギ消費量と建物性能及び生活様式に関するアンケート調査結果から,札幌における一世帯当たりの年間エネルギ消費量は平均で22.4Gcalであることがわかった.エネルギ消費量の内訳を見ると暖房用が12.6Gcal/世帯・年で全体の56.1%,給湯用は25.5%,厨房用は6.3%,照明・動力用は12.1%であった.世帯当たりの年間エネルギ消費量は,東京における値の1.7倍であった.給湯用および照明・動力用の消費量は東京とほぼ同じであるが,暖房用エネルギーは東京の3.8倍に達していた.これより,札幌における暖房用エネルギー消費構造の特異性が浮き彫りにされた.また,暖房用エネルギの94%以上が灯油で賄われていることから,化石燃料使用による家庭用エネルギ消費起源のCO_2排出抑制のためには,暖房用エネルギの削減が重要であることが示唆された. (2)これらのデータについて多重回帰分析を行いエネルギ消費量と相関の高い要因を分析した.その結果,住宅延べ床面積,年収,家族人数がエネルギ消費量と相関が高い要因として挙げられた.住宅の断熱仕様の違いによるエネルギ消費量の大きな相違は現れなかった。これは,個々の住宅において暖房面積,暖房時室内設定温度,暖房時間等が異なるからであると予測された.1973年の住宅エネルギ調査結果と比べると一世帯当たりの年間エネルギ使用量は25%程度少なくなっていることが明らかになった.暖房器具・住宅性能の調査結果の比較から暖房器具の効率の上昇に加えて住宅性能の向上によると考えられた. (3)分析結果から住宅延べ床面積,年収,家族人数で構成されるエネルギ需要量の推定式を提案した。 (4)住宅用熱負荷計算プログラムSMASHを用いて断熱,開口部,換気等の種々の建物条件を与えて住宅の暖房熱負荷計算を行い,断熱・気密化が年間の暖房エネルギ消費量の削減に与える効果を検討した.その結果,特に小屋根裏断熱の強化と窓のLow-Eガラスの使用が貫流負荷の削減に効果的であることがわかった.さらに貫流熱損出削減のためには,例えばダイナッミクインシュレーションシステムや,小屋根裏からの給気による貫流損失熱の回収を伴った換気システムの導入が有効であることが示された. (5)現在の札幌における住宅に断熱仕様の強化した場合,および換気熱回収装置を設置した場合の暖房用一次エネルギ消費量の削減量を計算した.また,これよりCO_2排出削減量を予測した.
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