リチウムクロムリン酸複合塩Li_3Cr_2(PO_4)_3を基本とする固体電解質について、NASICON型六方晶を得る目的で実験を行った。しかしLi_3Cr_2(PO_4)_3を1400℃以上の高温から急冷しても、NASICON型の六方晶を得ることができずやや歪んだ単斜晶(C/2c)となった。また、1200℃付近のbeta-Fe_2(SO_4)_3型の単斜晶(P2_1/n)から単斜晶(C/2c)への相転移により試料が細かく砕けてしまうため導電率の測定はできなかった。そこで、このLi_3Cr_2(PO_4)_3のCr^<3+>をMg^<2+>に置換させてリチウム量を増した、Li_<3+x>Mg_xCr_<2-x>(PO_4)_3系について検討を行った。格子定数の結果より、このMg^<2+>イオンはCr^<3+>のサイトに置換することができず混合相となっていることがわかった。また、この系の場合いくら高温から急冷してもすべてbeta-Fe_2(SO_4)_3型の単斜晶となった。この系はxの増大により導電率が著しく向上した。しかし、これはMg^<2+>イオンが置換できずに形成したLi_5Mg_2(PO_4)_3が焼結助剤として働き、焼結体の緻密性を向上させるためである。さらに、この系の導電率はx=0.4の4.6×10^<-5>S/cm(25℃)とこれまで報告されてきた酸化物の固体電解質では、これまでに申請者らが報告してきたNASICON型構造のものを除いて最大級であり、これからの発展が期待できる。さらにLi_3Cr_2(PO_4)_3結晶中をイオンが働くための活性化エネルギーが0.43eVであることを決定し、xの変化にともない粒界成分におけるイオン伝導のための活性化エネルギーが変化していることを確認した。
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