KFを利用したフラックス法により種子結晶を作製した。作製された種子結晶は5〜10mm、厚みが約250mum程度の直角三角形状のものである。単結晶成長に使用した焼結体は平均粒経約0.2mum、純度99.9%以上の水熱合成により作製された原料粉末を使用し、通常の焼結法により1200℃、10hの焼結を行った。得られた相対密度は約99.2%である。種子結晶、BaTiO_3焼結体ともに接合面を鏡面仕上の後に、1.5MPaの応力の下で接合を行った。そして種子結晶からの異常粒成長を生じさせるため、接合体を1250〜1350℃の範囲で熱処理を行ったところ、種子結晶の成長は焼結体の結晶粒成長挙動に大きく依存する事が判明した。そこで、BaTiO_3焼結体の結晶粒成長挙動を詳細に検討したところBaTiO_3焼結体は、1320℃において平均粒経2mumの微細組織から約150mumの粗粒組織へと変化することが判明した。さらに、このBaTiO_3焼結体の結晶粒成長挙動はBa/Ti比に大きく影響することを突き止めた。Ba/Ti<1.000の場合、BaTiO_3焼結体の結晶粒成長挙動は上記したような不連続粒成長を示す。しかし、Ba/Ti>1.000すなわち、Ba過剰組成では結晶粒成長は連続的に生じるため、1320℃以上に熱処理を行ってもTi過剰試料で認められたような150mum以上の粗大結晶粒組織とはならない。しかも、Ba過剰試料では種子結晶からの単結晶成長は認められなかった。すなわち、本方法による単結晶育成には、まず、焼結体がある温度以上で不連続粒成長を示すこと、接合体の熱処理温度はその不連続粒成長点以下でなければならないこと、以上の二点が重要であることが判明した。そこで、わずかにTi過剰組成とした焼結体を使用して種子結晶の成長を行ったところ、1300℃、20hの熱処理により1000mum以上の成長が認められた。今後、焼結体の相対密度をより向上させることが課題である。
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