Ni_3Alは高温において強さを増すため、高温構造材料としての使用が期待されている。しかし、室温で粒界破壊を起こしてほとんど延性を示さないため実用化にあたっては延性の改善が不可欠である。Ni_3AlのSIGMA3およびSIGMA1対応粒界は、ランダム粒界に比較して破壊し難いことが知られている。そこで、これらの粒界の割合を増すことによってNi_3Alの延性改善が期待される。本研究は、歪焼鈍法が選択的にSIGMA3およびSIGMA1対応粒界の出現頻度を高める方法として有効かどうかを検討し、あわせてNi_3Alにおける粒界性格分布との延性との関係を調べることを目的に行った。その結果、以下に示す事柄が明らかになった。 (1)Ni_3Alの凝固材は<001>軸回りにかたよった結晶粒を持つが、再結晶化および歪焼鈍によってランダムな結晶粒方位となる。 (2)歪焼鈍を施すことにより全体の対応粒界の割合が27%から58%まで増加し、さらにSIGMA3とSIGMA1の対応粒界の割合が4%から30%と著しく増加する。 (3)この結果、歪焼鈍法は選択的にSIGMA3およびSIGMA1対応粒界の出現頻度を高める方法として有効であること、また、、歪焼鈍を施した試料では50%の伸びが得られ、均一化熱処理のみを施した試料に比べ延性が著しく改善される。 (4)SIGMA3およびSIGMA1対応粒界を選択的に増加させることによりNi_3Alの延性改善が可能である。
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