化合物半導体の液相エピタキシャル成長において発生する成長層の表面形態の荒れは、成長膜厚のみならず組成およびドーパントの不均一分布をもたらすために、光素子の性能向上のためには現象の解明とその対策が不可避とされてきた。平坦な界面からの荒れの形成に至る過程は未だ不明な点が多く、実際の製造工程においても成長条件の設定等は経験的に求められることがほとんどであった。半導体のLPE成長時の成長面を直接観察することができれば、それは成長層形成過程の理解に有益な情報を与えるのみならず、LPE成長結晶の品質管理に対しても有効な手法になるものと思われる。本研究は、化合物半導体のLPE成長結晶面に対して、固相側から光学的手法によりその場観察する技術を確立し、併せて、成長条件と成長界面形態の関係、特に平坦な界面形態の不安定化過程と成長条件の関係を明らかにすることを目的としている。 GaP/GaP(111)B成長において、0.8Tの静磁場印可下での成長速度の測定値が拡散支配モデルに基づいた理論値と良い一致を示し、結晶表面でのマクロステップの発生が軽減されたことから、静磁場が液相中の流れを抑制し、ひいては界面安定化をもたらしたことが結論づけられよう。さらに、界面安定性理論に基づいたマクロステップ間隔の予想値と直接観察による測定結果は、液相の温度分布がほぼ等温である場合良い一致を示したことから、低指数面上での表面カイネティクスの寄与は“荒れた"面のそれと同程度であることが明らかになった。但し、マクロステップの形状そのものは表面カイネティクスの面方位依存性が支配しているものと思われる。
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