研究概要 |
本研究では、担持金属触媒のモデルとなる錯体を合成し、触媒反応特性に大きな影響を与える金属-担体相互作用の本質に関する分子レベルでの検討を行うこと、およびその錯体を用いた触媒反応を行うことを目的とした。まず、シリカ担持白金触媒のモデルとして、単核および複核の有機白金シロキソ錯体PtMe(OSiPh_3)(cod)(1)と[((cod)MePtO)SiPh_2]_2O(2)を合成した。 新規錯体1,2の構造はIR、NMR、元素分析、化学反応により行った。また、1の分子構造はX線構造解析により決定した。錯体1は室温以下、1気圧の水素雰囲気下で容易に還元され、配位子の水素化物と白金コロイドを与えることを見出した。 この白金コロイドを透過型電子顕微鏡で観察すると、その粒子径は5-10nmであることがわかった。この還元反応を利用して、錯体1をアルミナ表面に含浸担持させ、溶液中で水素と反応させることにより、温和な条件下でPt/Al_2O_3(3)が得られた。透過型電子顕微鏡の観察から白金の粒子径は約8nmで、塩化白金酸から通常法で調製したPt/Al_2O_3(4)に比べ、より白金が均一に分散していることが分かった。3による1,5シクロオクタジエンの水素化反応を行うと部分水素化のみ進行し、シクロオクテンが得られた(収率60%、選択率100%)。一方、4を用いた場合には完全水素化が進行してしまい、シクロオクタンが得られた(収率100%)。
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