亜鉛とヨウ化ブチルでの石炭の可溶化反応において反応活性種と考えられるジブチル亜鉛の(Bu_2Zn)とヨウ化ブチル亜鉛(BuZnl)とハロゲン化アルキル(RX)で夕張炭と石炭モデル化合物を反応させ、石炭の可溶化機構について検討し、以下の結果を得た。 1.Bu_2Zn、BuZul、RXの3つの化学種を夫々組み合わせて夕張炭と反応させベンゼンへの溶解度を調べたところ、石炭をベンゼンに溶解させるにはこれら3つの化学種全てが必要であることがわかった。 2.反応に用いるRXのアルキル基が短い場合でも石炭はベンゼンによく可溶化することがわかった。これはRXのアルキル基以外にBu_2Zn、BuZnlのブチル基が石炭中に導入されるためであることを明らかにした。石炭モデル化合物としてフィナントレンをBu_2Zn、BuZulとヨウ化プロピルで反応させたとき、生成物にブチル基とプロピル基の両方が導入されたことからも確認した。 3.Bu_2Zn、BuZul、RXの反応ではアルキル基が石炭モデル化合物の芳香環に置換しただけでなく付加もしたことから、ラジカル型のアルキル化とフリーデルクラフト型のアルキル化が競争的に起こることが推定され、Bu_2Zn、BuZul、RXの反応ではラジカル型のアルキル化が優勢であり、Bu_2Zn、RXの反応ではフリーデルクラフト型のアルキル化が優勢であることがわかった。またアルキル基の付加反応の方が置換反応より石炭の可溶化に効果が大きいことを明らかにした。 4.亜鉛とヨウ化ブチルで処理し、得られたヘキサン可溶化物は分子量が高く、還元ブチル化を受けていたことから、この方法で石炭が溶剤によく溶解するのは、芳香環の還元のためであり、架橋結合はあまり開裂しないことがわかった。 以上の結果は、Bull.Chem.Soc.Jpn誌に投稿中である。
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