水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)共存下でポリエステルを熱分解すると、ポリマー中のエステル結合が選択的に切断されると同時に分解成分のメチル化が達成される。この際、試料成分のメチル化が、TMAHだけでなく試薬溶媒であるメタノールによっても行われる可能性がある。そこで、TMAHの重水素置換メタノール溶液共存下において、ポリエステル試料のPy-GC/MS測定を行うことにより、溶媒による分解反応への関与をより詳細に解析した。p-ヒドロキシ安息香酸、テレフタル酸およびビフェノールから構成される3元ポリエステルをTMAH/CD_3OH共存下において、400℃で熱分解することにより、各構成成分のジメチル誘導体の3本のピークによってのみ構成されるパイログラムが得られた。次に、この3本のピークのうち、p-メトキシ安息香酸メチルのピークのMSスペクトルを測定したところ、m/z=166の通常のジメチル誘導体の分子ピークに加えて、m/z=169にメタノール由来のOCD_3基一つ含むジメチル誘導体のピークが観測された。このOCD_3基を含むジメチル誘導体ピークは、他の構成成分であるテレフタル酸ジメチルおよびジメトキシビフェニルのいずれのMSスペクトルにおいても観測された。このように、TMAHのCD_3OH溶液を反応試薬に用いたPy-GC/MS測地を行うことにより、TMAH試薬以外に溶媒によっても試料成分のメチル化が行われることが明かとなった。
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