研究概要 |
イネの葉身構造変化を伴わずに,光合成機能を高め得る施肥法の開発を指向し,一時的に高濃度の窒素肥料を施用した場合の影響を調査した.その結果,2300ppmN,12時間の処理によって,葉身の薄化拡大を伴わないで葉面積当たり窒素含有量を高め得ることが明らかになった.一方,この処理による各部位の乾物重当たり窒素含有量の変化を調査したところ,葉身部に比較して葉鞘+茎部においてその増大が大きいことが,また,根部では他の部位に比べて増大程度が小さいことが明らかになった.そして,この処理を移植直前に行った苗を移植したところ,小肥条件において移植後約2〜3週間の純同化率,相対生長率が高まり,有効化する低次分げつの発生が促進され,穂数の増加を通じた1株穎花数の増加によって増収につながることが明確になった.さらに,本処理の効果は品種によって異なり,比葉面積が本来的に小さい品種において,処理による葉面積当たり窒素含有量の増大程度が大きく,移植後の生育促進効果が大きいことが明らかになった.他方,一時的な高培養液濃度条件下において,品種の違いによる窒素吸収の差異を窒素形態別に調査したところ,NH_4^+吸収量には統計的に有意な品種間差は認められなかった.それに対して,NO_3^-吸収量には明確な品種間差が認められること,また,その差異はインド型,日本型という生態型の別とは対応関係がないことが明らかになった.
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