研究概要 |
一般に食植性昆虫は特定の植物群のみを選択的に寄主としており、この選択には植物に含まれる化学因子が重要な役割を果たしている。極めて近い種間においても寄主選択の幅が異なり、この昆虫類の寄主選択の化学的基盤を相互的に解析することは、昆虫類の農業害虫化への過程を追跡、あるいは害虫防除への新しい槻念の導入や新規素材を開発する上で重要と考えられる。そのモデルとして、日本のみならず、アジア各地において稲作に多大な被害を与える3種ウンカ(トビイロ、セジロ、ヒメトビ)の寄主選択機構の生物的、化学的解析を試みた。 昨年度の研究(奨励A萌芽的研究)により、上記の3種ウンカが当該するイネ科栽培ビエを寄主植物とし得ない要因が、いずれも複数の化合物が合わさることにより活性を発現する"複合系"の摂食阻害物質によることを明かにしており、本年度の研究でさらに、シコクビエに含まれるトビイロウンカの摂食阻害活性が、新規化合物2種を含む9種のシコクビエに特異的な酸性化合物群により制御されていることを明かとし、その構造をもすべて明かとした。 すなわち、Malic acid,Isocitric acid,Vanillic acid,4-Hydroxybenzoic acid,4-Hydroxybenzaldehyde,2-O-(4-Hydroxy-(E and Z)-cinnamoyl)glyceric acid,Vitexin,6"-O-(3-Hydroxy-3-methyl-glutaroyl)-glucopyranosyl)apigeninの9種化合物が合わさってはじめてトビイロウンカに対して摂食阻害活性を示すという興味深い結果を得た。これらの結果を2つの報文として学会誌に投稿した。 現在さらに他の栽培ビエに含まれる摂食阻害物質の単離に着手している。
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