遺伝的組換えウイルス殺虫剤のモデル実験として、ポリヘドリン遺伝子をクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子に置換した組換えAutographa californica核多角対病ウイルスを作製した。この組換えウイルスをSpodoptera frugiperda細胞に接種したところ、接種後24時間には高いCAT活性が認められた。4種の鱗翅目昆虫、ハスモンヨトウ(Spodoptera litura)、カイコ(Bombyx mori)、ヨトウ(Mamestra brassicae)、アワヨトウ(Pseudaletia separata)に組換えウイルスを接種した場合、いずれの種においてもウイルス由来のCAT活性が認められ、CATアッセイにより容易に組換えウイルスが検出できることを確認した。 また、環境への残留や拡散の少ない組換えウイルス殺虫剤を創製するため、宿主である培養細胞に予め多角体蛋白質遺伝子を導入することによって、多角体蛋白質遺伝子が欠損した組換えウイルスを、多角体に包埋することを試みた。 組換えウイルスには上述のウイルスを使用し、導入プラスミドには、多角体蛋白質遺伝子の全長を含んでいるプラスミド、pAcEIを用いた。選択マーカーとして、ネオマイシン耐性遺伝子のコード領域が、それぞれショウジョウバエの熱ショックプロモーターあるいはトランスポゾンcopiaのLTRに接続されたプラスミド、pUChsneoあるいはpUCcneo-2を用いた。Spodoptera frugiperda細胞にpAcEIとpUChsneoあるいはpUCcneo-2をDNA-りん酸カルシウム共沈法によって共導入し、抗生物質G-418を含む培養液で選択した後、組換えウイルスによる感染実験を行った。 形質転換細胞がpUChsneoにより3株、pUCcneo-2により3株得られたが、いずれの細胞株に組換えウイルスを感染させても、多角体の形成は認められなかった。現在はその原因について検討中である。
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