研究概要 |
A.scRNAの機能ドメイン構造の検索 ドメインIVしか持たない大腸菌4.5SRNAをSC200NA株に導入したところ、対数増殖期の生育は完全に回復させたが、定常期での増殖や胞子形成能の回復はみられなかった。一方、4ドメインからなるヒトSRP 7SRNAを導入したところ、対数、定常期の生育を共に完全に回復させることができた。さらに、scRNAのドメイン構造と機能分担を解析するため、各ドメインを欠失させた変異scRNAを構築した。各異変scRNAの機能はSC200NA株のIPTG非存在下での生育の回復を指標として判断した。その結果、ドメインIV領域の生物種間で保存性の高い22残基を欠失させたところscRNAの機能は完全に消失した。この時、B.で同定した51KD蛋白質の変異scRNAへの結合性も低下していたことから、ドメインIV領域のステムループ構造はこの蛋白質の結合部位となっていることが示唆された。現在、この部位にランダムな突然変異を導入して蛋白質結合に必要な構造解析を行っている。 一方、ドメインI及びI,IIの両方を同時に欠失指せた場合、対数期での生育には影響を示さなかったが、定常期での増殖を回復することができず、また、熱耐性の胞子形成率や菌体外プロテアーゼ生産量も野性型と比べ著しく低下していた。従って、scRNAのドメインI,II構造は真核生物の細胞分化過程に相当する胞子形成において必須であることがわかった。このことは、ドメインI,IIが真正細菌の中では胞子形成能を有する枯草菌のみでみられていることとよく一致する。 B.scRNA結合性蛋白質の検索 試験管内で合成したscRNAをプローブとして枯草菌全蛋白質についてノースウエスタン法で解析したところ、3種の蛋白質がポジティブに反応した。そこで、scRNA複合体の存在と存在様式及び構造とについて解析を試みた。超音波破壊した菌体を膜画分と細胞質画分とにした後、膜画分から複合体の塩抽出・アミノペンチルカラムによるカラム精製を行った。カラム溶出液を520%のショ糖密度勾配遠心法でさらに精製を進めた。SDS-PAGEによる解析より、scRNA結合性蛋白質として3種の蛋白質が確認された。N末端の解析や遺伝子レベルでの解析から、3種のうち51KDの蛋白質は哺乳動物のSRPの一つであるSRP54と高い相同性があることがわかった。
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