研究概要 |
〇表記の課題を達成するためにはまず植物組織内に含まれている極く微量のアルデヒド類を再現性よく定量することが必要である。この目的のためこれまでの定量法に改良を加え、2,4-dinitrophenylhydrazineをプローブとしたHPLC分析によりpmoleオーダーまで感度を高めることに成功した。この定量法を用いて発芽2週間のエンドウ最下位葉に傷害を与え、その葉と、そのすぐ上の葉のアルデヒド含量の経時的変化を測定した。この時、傷害を直接与えた葉では1分以内にアルデヒド量が急激に増加し、その後、徐々に減少した。一方、傷害を与えた葉のすぐ上の葉中のアルデヒド量は傷害刺激後10分から60分まで増加した。このことは傷害刺激が植物体内で伝達されていることを示す。この伝達様式を明らかにするために、これまで植物において情報伝達に与っていることの知られている酵母エリシター、サルチル酸または過酸化水素を切除したエンドウ葉に直接塗布した。いずれの場合もアルデヒド量の増加は見られず、傷害誘導による刺激伝達様式は新規のものであることが示唆された。 〇一方、切除したエンドウ葉にアルデヒド生成系の中間体であるリノール酸またはリノレン酸を塗布すると、これらは速やかに対応するアルデヒドへと代謝された。この実験結果とエンドウ葉内にはLipoxygenase、Fatty acid hydroperoxide lyaseが共に十分量存在していることからアルデヒド生成の律速段階は脂質の加水分解による脂肪酸の遊離にあることが示された。そこで脂質加水分解酵素活性発現の制御様式を検討するため、エンドウ葉を種々の濃度のCa^<2+>キレート剤、EGTAを含む緩衝液で磨砕した。しかしながらEGTAの添加はアルデヒド生成をむしろ促進し、脂質加水分解のステップはCa^<2+>では制御されていないことが明かとなった。 なお、この成果の一部は国際植物科学会議に於て発表した。また、報文の投稿準備中である。
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