【目的】食事検体中のポリフェノール重合体に焦点をあて、(1)ポリフェノールの測定法の確率を行なうこと、(2)陰膳方式により採集したサンプル中のポリフェノール量を実測することによって間接的に緑黄色野菜摂取量を見積もることができるかどうか、(3)サルモネラ菌に変異を起こす活性を見る系であるAmes testを用い、多種多環性変異原物質の活性に対して、ポリフェノール重合体による変異原性抑制ならびにプロモーション抑制について検討することを目的として実験を行なった。 【方法】陰膳法で採集した沖縄県、秋田県の食事サンプルからポリフェノール類を抽出し、Folin-Denis法によって定量した。更に、ポリフェノール類の発がん抑制作用を確認するためにAmes testを実施した。 【結果】ポリフェノールの測定法として、上記のようにFolin-Denis法を用い、回収率を検討したところ、ほぼ100%の回収率が得られたことによって測定法が確率したと判断した。沖縄県と秋田県における総ポリフェノール量で差は認められなかった。これは、以前の我々の調査表を用いた研究によって得られた結果とは一致するものにならなかった。この理由として、(1)今回測定したサンプルが沖縄県と秋田県の食事サンプルを代表していなかったのではないかという点、(2)凍結乾燥した食事サンプル中のポリフェノール量の測定法に若干問題があったのかもしれないという点、更に(3)サンプル数が少ないという点が挙げられる。今回の結果で示されたように、胃がんにおいて低リスクファクターであると推測した緑黄色野菜摂取量として間接的に測定したポリフェノール量で差は見られなかったことより、抑制因子よりも危険因子としての「高塩食品中のNaCl」の方が大きく影響している可能性が考えられる。 但し、ポリフェノールとして知られているカテキン及びエピガロカテキンガレートは抗変異原性をもち、更に明瞭な量-反応関係が観察され、変異原性抑制の作用が強く示された。このポリフェノールによる発がん抑制作用はフェノール性水酸基に基づく抗酸化力と関連して、活性酸素除去能を有するラジカルスカベンジャーとしての作用であると考えられる。
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