本研究は、畜産物(食肉、鶏卵、牛乳、加工品)の消費行動と小売市場構造の分析を行ったものである。 1.畜産物の消費行動の分析 消費者の畜産物の消費行動について、量・質・購入店舗の選択行動から まず、『家計調査年報』の所得階層別データを用いて、1人当たり購入数量の所得弾力性と購入単価の所得弾力性を計測した。 次に、『消費実態調査』の所得階層別データを用いて、所得が畜産物消費金額に与える影響を分析し、購入数量、購入単価、購入店舗の形態の選択の効果を計測した。 その結果、畜産物消費は、量志向の低下、質志向の上昇の過程にあることが明らかになった。また、消費金額においては、数量効果と店舗効果が増加し、単価効果が減少していることが示された。 2.畜産物の小売市場構造の分析 まず、畜産物の卸売価格、小売価格のデータをもとに小売マージンの計測を行った。 次に、『全国物価統計調査』をもとに、畜産物の小売価格の格差の要因(店舗形態・立地・地域性・商圏)について分析した。 その結果、小売価格の弾力性は、鶏卵で大きく、食肉などで小さいことを明らかにした。また、小売価格の格差については、一般的動向として、地区別での大都市の高価格性、店舗形態別でのスーパー店の低価格性がみられた。立地・商圏別では、商圏の拡大が価格競争を生み、小売価格の低下を招くと予想されたが、有意な差はみられなかった。しかし、核店舗の存在は価格競争を引き起こしていると推察された。
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