豆腐粕やビール粕などの食品加工残渣あるいは家畜糞を汚泥表面から乾燥させると表面の乾燥に比べて汚泥内部の乾燥は著しく遅れる。この原因は、内部蒸発した水分が表層で凝縮液化して、その水分が汚泥内部に逆流するためであることを実験的に示してきた。これち乾燥によって生じる汚泥表層の構造的変化によるものと考えられ、本研究ではその構造変化の画像化を中心に研究を進めた。 X線CTによる画像では高精度の分解能が得られないので、電子顕微鏡による画像化を試みた。今回使用した電子顕微鏡は低真空型走査型顕微鏡(JSM-53000LV)で、試料を凍結しないでそのまま撮像するため高水分汚泥の構造観察に適するものである。 実験材料として豆腐粕を供試して、通風式乾燥装置によってある一定時間乾燥した試料を切断して表層から内層に至る汚泥の構造変化を観察した。この結果、汚泥は乾燥するにしたがって収縮するが、その際に直径100〜200mum程度の細孔が生じること、この細孔は曲折してつなかっていることがわかった。また、汚泥の固形部は細胞質であるが、乾燥が進むにつれて細孔周辺の細胞が乾燥してフィン状に突起する現象がみられた。汚泥内部から蒸発した水蒸気はこのフィン状の細胞に付着して凝縮が進むものと考察された。 さらに、乾燥過程における比表面積の変化について窒素ガスを吸着媒としてBET法による測定を試みた。この結果、汚泥表面の乾燥部は収縮するため内部に比べて約1/2の比表面積であり、水分の蒸発が盛んな水分蒸発層は内部に比べて約2倍の比表面積であった。このことから、水分蒸発層の水分ポテンシャルが表層に比べて高くなるので、その結果として液状移動水の逆流が生じるものと推察された。
|