研究概要 |
1.副腎髄質におけるcADPR合成経路の存在.ウニ卵ホモジネートからのCa^<2+>放出を指標としてcADPR活性を測定した(後述)。ウシ副腎髄質ホモジネートとbeta-NADのインキュベート上清は、ラットの各臓器とともにcADPR活性を示した。alpha-NADでは活性は見られなかった。 2.カテコールアミン分泌刺激によるcADPRの産生 アセチールコリン(100muM)はカテコールアミン分泌およびCa^<2+>放出の最大反応を起こしたが、ウニ卵ホモジネートからのCa^<2+>放出を指標とした時のcADPR活性は認められなかった。 3.cADPRのCa^<2+>放出作用とその性質.副腎髄質ホモジネートは時間および温度依存性に^<45>Caを取り込んだ。^<45>Ca取込みはATP濃度依存性(0-1mM,ED50 0.5mM)であったが、ATP非存在下でも有意な取込みがあった。50muMまでのIP3およびcADPRは^<45>Ca取込みに顕著な影響を与えなかった。IP3やcADPRにより放出されるCa^<2+>量が取り込まれたもののごく一部であれば^<45>Caトレーサー法では検出されない可能性があるので、Fura2を用いて、ホモジネートから放出されるCa^<2+>放出を測定した。IP3は濃度依存性(10-20000nM,ED50 500nM)にCa^<2+>放出を起こし、その程度は負荷したCa^<2+>量に依存していた。IP3の効果はthapsigarginの前投与により消失し、ヘパリンにより濃度依存性(0-200mug/ml,IC50 10mug/ml)に抑制された。しかし、cADPRは1muMの高濃度でも全く影響を与えなかった。同様に、ラット大脳ホモジネートにおいても、IP3はCa^<2+>を放出させたが、cADPRは効果が見られなかった。一方、cADPRの作用が最初に報告されたウニ卵のホモジネートでは、同濃度のcADPRはCa^<2+>を放出させた。 以上の成績より、ウシ副腎髄質にはbeta-NADをcADPRに変換する酵素は存在するが、アセチールコリンによりcADPRは産生されず、またcADPRにより作動するCa^<2+>放出系も存在しないことが示唆された。また、ラットの各臓器における成績を考慮すれば、cADPRが細胞内セカンドメッセンジャーとして哺乳類細胞内のCa^<2+>放出を制御している可能性は低いものと想像される。
|