頭突起ニワトリ胚の予定心臓中胚葉(PCM)は単独で培養すると拍動組織を形成しないが内胚葉あるいは成長因子がとともに培養すると拍動組織を形成することがわかっている。本研究では異なる成長因子により形成された拍動組織の形態を比較し成長因子が形態形成に果たす役割を考察することを目的とした。 位相差顕微鏡での観察で以下の事実がわかった。IGF-1によりPCMは100%拍動組織に分化した。組織は不規則な形の拍動する細胞魂とその周囲の培養皿上に伸展した拍動しない上皮細胞と単独細胞から成っていた。アクチビンAによってもPCMは100%拍動組織に分化した。IGF-1の場合と異なり拍動細胞魂は球形で小さく、拍動しない伸展した細胞はほとんどなかった。bFGFは60%のPCMを拍動組織に分化させた。拍動頻度は3種の成長因子により形成された組織中で最も低かった。拍動組織はIGF-1により形成された組織に似て不規則な拍動細胞魂とその周囲の拍動しない上皮細胞と単独細胞から成っていた。拍動しない細胞を含めた組織の面積は3種中で最大であった。この3種類の成長因子はニワトリ胚生体内に存在することが報告されており生体内でもPCMの分化に影響を与えている可能性がある。内因子を加えた場合よりも早く、拍動細胞魂の大きさも最大であった。内胚葉は複数の成長因子を分秘していると思われる。以上の成果は国際誌に掲載される予定である。 当初の予定であった免疫染色や電子顕微鏡を用いた分子レベルの形態の比較は充分な結果を得られていない。
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