免疫系には日内リズムが存在することが知られている。また感染防御においても細菌投与のタイミングによって宿主の感染感受性が変化することが報告されている。しかし現代社会においてよく経験される生体リズムに歪みが生じた場合の感染防御、免疫系の変異についてはほとんど解析されていない。そこで本研究では夜行性であるマウスを対象に、血中コルチコステロン濃度を日内リズムの指標として、感染防御に対する生体リズムの歪みの影響を検討した。コルチコステロン日内リズムを変化させる手段として、自動給餌時間制限装置を作成し、給餌時間を明期のみに制限、あるいは、2日間の絶食(飲水可)を実施した。明暗サイクルは明期6時〜18時、暗期18時〜6時とした。対照として給餌制限をしない群、通常の摂食時間である暗期にのみ給餌する群をおいた。血中コルチコステロンサイクルは対照の自由摂取群と4週間暗期給餌群では16時に最大、4時から8時に最小となったが、4週間明期給餌群では位相が逆転し、最大値が対照群のおよそ2倍になった。一方2日間絶食群では位相の変移はなかったが、最大値が対照群の約5倍になった。次にこの位相変移、振幅増大の2種類のリズム異常モデルに対して感染実験を行った。ほぼ50%致死量のリステリア菌、または大腸菌を経膜腔的に投与して生存率を観察した結果、リステリア菌菌投与時は明期給餌群が対照群、暗期給餌群に比して生存率が低い傾向にあったが、統計的有意差はなかった。一方大腸菌投与に対しては絶食群の5%の危険率で有意に生存率が対照群に比して低かった。現在この生存率の低下が2日間の絶食によるエネルギー基質ま欠乏によるのか、内因性ステロイドの増加に起因するのか、阻害剤の利用により解析を行っている。内因性ステロイドの関与が明らかになれば、生体リズムの歪みにより感染防御能が障害されるモデルが確立し、細胞レベルの変化の追求が可能になると考えている。
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