一過性外向き電流(I_A、A電流)は多くの興奮性神経細胞に存在しその放電頻度を調節ししている。アンギオテンシンII(AII)によるバゾプレッシンの血中濃度の増加にこのA電流が関与しているかどうかについて検討した。成熟雄ラットのスライス標本を用い直視下に視索上核ニューロンを同定し、whole cell clamp法によりA電流を単離した。NaおよびCaイオン電流を抑制するために潅流液は無Naとし、Coイオン(2mM)を加えた。アンギオテンシンIIの効果を調べる際には、GABA系の入力を抑制するためにピクロトキシン(50muM)を、また、IKを抑制するためにTEA(5mM)を加えた。調べた58%のニューロンにおいて、アンギオテンシンIIの投与によりA電流が抑制された。抑制の程度は約30%であった。以上のことより、アンギオテンシンIIによるA電流の抑制が視索上核神経分泌ニューロンの放電頻度増加に関与していることが示唆された。 さらに、人口脳脊髄液を用いて、アンギオテンシンIIのmEPSCおよびevokedEPSPに対する影響について検討した。AIIの潅流投与によりmEPSPの頻度の増加が観察された。また、AIIのAT_1受容体拮抗剤であるLosartan Potassiumの投与によりevokedEPSPの振幅が減少したことより、視床下部の視索上核にはAIIのシナプス入力が存在することが示唆された。
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