研究概要 |
現在血管平滑筋の研究の材料として多く利用されている培養血管平滑筋細胞に平滑筋型の細胞骨格蛋白質の減少など脱分化しているという欠点があり、平滑筋細胞の性質を検討する上で正確な実験結果を得る為にも培養血管平滑筋細胞の分化モデルを開発することが必要となっている。そこで今回の研究では多種類の細胞の核内に普遍的に存在している分化制御遺伝子の一つであるE12の血管平滑筋細胞での分化調節の機構を知ることを目的として以下の実験を行った。 1、現在一般に用いられているラット大動脈初代培養平滑筋細胞、A10株化細胞の培養条件の検討を行った。また、カルデスモン、alpha平滑筋型アクチンの抗体によりウエスタンブロットを行った結果、alpha平滑筋型アクチンはかなりの発現量が認められたがカルデスモンは非平滑筋型のアイソフォームが大部分を占めていた。他の入手した抗体も検討した結果平滑筋の分化程度の指標としてまずカルデスモンの平滑筋型と非筋肉型の量比を観察し次にアクチンなどの他の細胞骨格蛋白質の量の増減を比較することを決定した。 2、E12の抗体を作成する為にヒトE12cDNAを発現ベクターPGEX-3Xに導入し大腸菌内にGSTとの融合蛋白質として発現させグルタチオンアフィニテイカラム、イオン交換カラムにより精製後factorXaによりE12蛋白質を得、それをウサギに免疫することによりポリクローナル抗体を作成した。 3、ヒトE12遺伝子を培養平滑筋細胞に導入する為にpRSVneo又はpMANneoベクターにヒトE12cDNAの導入を試みた。pRSVへの導入は成功しそのベクターのラット大動脈培養平滑筋細胞に導入を試みた。現在PCR,サザンブロット、ウエスタンブロットにより導入の成否を確認中である。
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