C型肝炎ウイルス(HCV)のプロテイナーゼ1(Cpro-1)の活性はインビトロの転写翻訳系を用いて活性領域を発現させ、パルスチェイス解析を行うことにより経時的に観察された。このチェイス時に種々のプロテイナーゼ阻害剤を反応液に加えて、そのCpro-1活性に対する影響を検討したところ、用いた種々のプロテイナーゼ阻害剤の中で唯一金属キレート剤出あるEDTA がこの活性を高率よく阻害することがわかった。またこのEDTAによる活性阻害はZnCl_2 を反応液中に加えることにより抑制され、またEDTA非存在下のチェイス時にZnCl_2を加えるだけでCpro-1活性は対照の3倍に上昇することが観察されたことからCpro-1活性がZn依存的な金属プロテイナーゼ活性であることが推定された。この活性領域中に存在し、種々のHCV株間に保存されたアミノ酸のうち金属イオンに配位可能なアミノ酸すべてについて個別に他のアミノ酸に置換した変異体を作成し上記同様に発現したところHCV前駆体上952番目のヒスチジンおよび993番目のシステインに変異を導入した場合この活性が失われることがわかり、これらのアミノ酸が金属イオンの配位子となることが推定できた。バキュロウイルスベクターを用いて培養昆虫細胞内においてこの活性領域を含むHCVポリペプチドを発現させ、その切断産物p70(NS3)を部分精製した後、そのアミノ末端アミノ酸配列を決定したところHCV前駆体上1027番目のアラニン残基であった。またHCV前駆体上1026番目のロイシンと1027番目のアラニン残基を他のアミノ酸に置換することで切断効率の低下が観察された。以上のことからこのプロテイナーゼがHCV前駆体上1026番目のロイシンと1027番目のアラニン残基の間を切断することを強く示唆する結果が得られた。
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